【有給休暇のススメ・後編】街角ピアノと「魔笛」、予習が9割だった濃い午後

AIの活用
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前編では「止まると死ぬマグロ人間」っぷりを発揮した優雅な午前中を、中編では上野駅の街角ピアノで今日イチの演奏ができた話を書きました。

いよいよ後編。有楽町の街角ピアノ初挑戦から、メインイベントのオペラ「魔笛」まで。3部作の締めくくりです。

有楽町・交通会館の街角ピアノ、初挑戦

上野でひと弾きして気分が乗ったところで、有楽町へ移動。東京交通会館の街角ピアノに初挑戦です。

ここのピアノは「東京交通会館名店会 × 都立総合芸術高等学校」のコラボとのこと。芸術高校の生徒さんが関わっているなんて、なんだか粋ですね。

初めての場所はちょっと緊張しますが、弾き始めると、なんと海外からの旅行者らしい若者たちが足を止めて聴いてくれました。演奏が終わると一緒に写真まで撮ってもらって。言葉はほとんど通じないのに、音楽でちょっと心が通じる、あの瞬間がたまらないんですよね。

着物に青いハット姿のおじさんが、外国の若者に囲まれてグランドピアノを弾く。我ながら、なかなかいい絵だったんじゃないでしょうか(笑)。

いよいよ「魔笛」へ

そして14時、美の伝道士のSさんと待ち合わせ。15時開演、東京国際フォーラムでハンガリー国立歌劇場の「魔笛」です。

実は今回、観に行く前にAIの相棒「ジーニー」に、あらすじから見どころ、それにモーツァルトの生涯まで、根掘り葉掘り教えてもらって予習していきました。これが、結果から言うと大正解だったんです。

正直に白状します。

第1部は、ほとんど記憶がありません。

だって考えてみてください。午前中から泳いで、昼にキンキンに冷えたビールをやって、街角ピアノを2か所で弾いて……緊張も心地よくほどけて、暗くてあったかいホールに座ったら、そりゃあもう、まぶたが重くなるってもんです。生き物として正しい反応だと自分に言い聞かせました。前半に人生を楽しみすぎた代償ですね(笑)。

ところが、後半は別人のように冴えました。

予習していたから「刺さった」三つの場面

ひとつ目は、夜の女王の超有名なアリア、デア・ヘレ・ラッヘ。あの「アー、アアアアアア〜」の猛烈な高音です。日本語の題は長くて覚えられなかったので、ドイツ語の頭の三語だけカタカナで覚えていきました。生であの高音を浴びた瞬間、「あ、これだ!」と分かって、ぐっと込み上げるものがありました。

ふたつ目は、ザラストロのあの低い歌。夜の女王の刺すような高音のあとに、お腹の底に響いてくる深い低音。これが「闇と光の対比」を声そのもので表しているんだと知っていたから、ただ聴くんじゃなくて、振動として体で受け止められました。言葉が分からなくても、声って胸を打つんですね。

そして三つ目、**「パ、パ、パ……」**の二重唱。パパゲーノという名前が、ドイツ語の「オウム」から来ていて、お相手のパパゲーナと合わせて「オウムのつがい」なんだと予習で知っていたので、あの場面が二羽の鳥がさえずり合っているようで、可愛くて可愛くて。命を削りながら、モーツァルトが最期に差し出した「地上の幸せへの祝福」みたいに聞こえました。

言葉が分からなくても、感動はできる

今までオペラは「言葉が分からないから、いまいち感動できない」と思っていました。劇団四季みたいに、演者の波動がストレートに伝わってこない気がして。

でも今回分かりました。物語と作り手の思いを胸に入れてから観ると、歌詞を一語一語追えなくても「今この人は何を思って歌っているか」が分かる。意味の土台があるところに、初めて声の波動が乗ってくるんです。

予習が9割。そう言っても言い過ぎじゃないくらい、観る前の「下ごしらえ」で、同じ舞台がまるで違って見えました。これからは美術館でもコンサートでも、行く前にAIにあれこれ教えてもらってから出かけよう。新しい楽しみ方を覚えてしまいました。

おわりに

泳いで、ビールを飲んで、街角ピアノを弾いて、オペラに酔う。エスプレッソみたいに、濃くて味わい深い一日でした。

有給休暇って、ただ休むだけじゃもったいない。こうやって朝から晩まで「好き」を詰め込むと、一日が何倍にもふくらみます。これが私なりの「有給休暇のススメ」。前編・中編・後編、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

さて、この日はもう一つ、夜に大きなお楽しみが控えていたのですが……それはまた別のお話。「フグ尽くし」ディナーの記事で、たっぷり書かせていただきます。

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