息子の引越したアパートの片付けの「本番」のお話です。
■ グーグルマップと、想像を超えた玄関
息子が住んでいたアパートは、馬橋駅から少し離れたところ。私の家から自転車で40分ほどでした。
慣れない道なのでグーグルマップを見ながら、それらしいところまでは行けたのですが、肝心のアパートが見つからず、結局息子に電話して迎えに来させました。69歳、最後は人力ナビです。
アパートに着いて、部屋の扉を開けるとき、私も「片付けのできない息子」ですので、それなりには覚悟はしていました。
ただ、冷蔵庫や洗濯機などの生活に必要な家財道具は引っ越し業者持って行ってくれてますので、残っているゴミもたいしたことないだろう…と。
扉を開けて、ビックリ⁉️
廊下、リビング、トイレ、洗面所、お風呂。ゴミが「層」になっているのです。
床に「ゴミを散らかした」のではありません。
「ゴミを敷き詰めた」うえに、「ゴミを山に積み上げた」状態です。
テレビでゴミ屋敷のニュースを見るたびに「世の中には片付けられない人がいるんだなぁ」と他人事だった私。この部屋を見て、思わず心の中で叫びました。
「こんな大人に育てた、親の顔が見たい…」
…よく考えたら、私でした。
■ トイレットペーパーの芯、100個
まず息子に指示を出しました。元自衛官、こういうときの段取りだけは得意です。
「私が水回りをやる。お前はリビングの空き瓶、空き缶、可燃ゴミだ。分別した袋は、とりあえずベランダに置け」
キッチンのシンクには、カビだらけの瓶と缶と洗剤の容器が山積み。まずそれを袋に詰めて、やっと水が流せる状態にしました。
次はトイレです。
便器は真っ黄色。そしてテッシュの山の中に、トイレットペーパーの芯が…ざっと100個。
なんで、トイレという世界一狭い空間に、テッシュの山と、トイレットペーパーの芯が100個…?
息子に、聞きたいことは山ほどありましたが、そんなヒマはないので、松戸市指定の特大可燃ゴミ袋2袋に、黙々と詰めました。
洗面所とお風呂には、シャンプー、リンス、シェービングクリームの容器が、キャップも合わせて100個以上。
そしてリビングには、ウイスキーの瓶が空き・中身入り・未開封あわせて50本以上。缶にいたっては、中身入りが50本以上、空き缶が100本以上、他のゴミと一緒にきれいに(?)敷き詰めてありました。
なんで空き缶と中身入りが仲良く並んで床一面に…?
ここも聞きたかったのですが、ぐっとこらえて手を動かしました。
ちなみに私は、部屋には土足で入りました。息子は「スリッパを履いて」と言ってきましたが、この部屋にスリッパで踏み込む勇気は、元自衛官にもありませんでした。
■ ドボドボが、気持ちよくなってきた
お風呂は、圧巻でした。
天井から壁から浴槽まで、赤カビ黒カビのフルコース。よくここでシャワーを浴びてたなぁ…と、また「親の顔が見たい」が出そうになりました(私です)。
厄介だったのは、散乱した容器がぜんぶヌルヌルで、中身がそれなりに残っていたこと。
フタを開け、蛇口から水を入れ、口を手で押さえて上下に振って、中身を浴槽にドボドボ…容器はゴミ袋へ。これを何十本も繰り返します。
最初は「気持ち悪いなぁ」と思っていたのに、20本目あたりから、水を入れて、振って、ドボドボドボ…と出てくるのが、なぜか「気持ちいい…」と思っている自分がいて、いちばんビックリしたのはそこでした。
11時に始めて、ちょうど2時間。水回りのゴミをすべて袋に詰め終えたところで、お風呂にカビキラーを2本まるごと撒き散らし、トイレにはトイレハイターを1本まるごとかけて、お昼ご飯にファミレスへ向かいました。
■ ビールを注意される父
2時間モクモクと働いて、ノドはカラカラ、お腹はペコペコ。
当然、ビールの大瓶と、美味しそうなランチセットを頼みました。
すると息子が、「おいおい、今日中に片付けないといけないんだから、ビールなんか飲むなよ…」
おい。
「お前なぁ、人に手伝ってもらって、よくそんなことが言えるなぁ。こっちだって、あんな部屋、酒でも飲まなきゃ片付けられないぞ!」
息子は1〜2年前に帯状疱疹をやってから、お酒は飲んでいないそうです。
「じゃあ、あの部屋の空き瓶と空き缶は、いつからあったんだ…」
という新たな謎が生まれましたが、それよりビールとアナゴの天ぷら、ビールとお寿司、ビールとお蕎麦の「美味しいこと」に集中することにしました。


■ 「初めて親らしい後ろ姿を見たよ」
午後は掃除です。
便器にこびりついた黄色いやつは、何で擦っても落ちません。最後の手段として、栓抜きの金具でガリガリとこそぎ取りました(便器にキズがつくので、家では絶対やりません)。見た目は、なんとかキレイになりました。
お風呂はカビキラーのおかげで、水をかけるだけで天井も壁もだいぶキレイに。ただし、汚れのヘドロが詰まって排水口から水が流れず、柄付きブラシでかき混ぜて、なんとか開通させました。
そんな私の後ろに息子が来て、ひとこと。
「初めて親らしいお前の後ろ姿を見たよ」
「うるさい!」
その後、エアコンのフィルターと換気扇を洗い、ベランダいっぱいに積み上がったゴミ袋をゴミ置き場へ運び、壁と床を拭き掃除。
ふと見ると息子は、お風呂の落ちそうにない黒い汚れを、何かにとりつかれたようにゴシゴシ擦っています。
「もうその汚れは落ちないから、やらなくていいぞ」と言っても、ゴシゴシ、ゴシゴシ。
何年も掃除してなかったわりに、変なところだけ一生懸命…もっと早くからやりなさいよ。と、心の中でつぶやきました。
■ 帰り道
驚くほどキレイになった部屋を見て、息子と二人、少しだけその成果に浸りました。
19時。そのアパートでは出せないペットボトルと粗大ごみの布団を、北松戸の元の妻のところに置いて、私は帰路につきました。
お土産は、未開封のウイスキーと焼酎を何本か。ゴミ屋敷から発掘された、本日の給料です。
パラパラと降ってきた雨に打たれながら、こんなに長い時間、息子と一緒に過ごしたのは初めてだなぁ…チョッピリ親らしいこともできて、いい思い出になったなぁ…なんて思いながら、ペダルをこいで帰りました。
PS:次の日、太ももが久しぶりの筋肉痛でした。ずっと中腰でゴミを片付けたり、拭き掃除をしていたからだと思います。掃除も筋トレになるなぁ…。
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コメント
いいお父さん…したね