69歳のデート、「飲み放題」という底なし沼 ― 上野の街角ピアノから、御徒町の夜まで

グルメ
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■ 18時30分から逆算した、17時15分

お店の予約は18時30分。
そこから「上野の街角ピアノを弾く時間」を逆算して、職場を出たのが17時15分。

……予約時間じゃなくてピアノの時間から逆算してる時点で、
もう心は仕事場にいませんでした。

■ 上野・街角ピアノ ― サティ「ジムノペディ」

ピアノに着いたら、横にベビーカーを置いて、カーディガンを脱いでる女性がいました。
これはどう見ても「これから弾きます」の準備でしょう。

「ピアノ、弾かれますか?」

「どうぞ」

……先に弾かせてもらいました。
名前も知らないあなた、ありがとうございました。

さて、弾く直前の心の中はどうだったかというと。
これがね、妙に落ち着いてたんです。
いつもは椅子に座った瞬間、心臓が「ドッ」といくんですけどね。

エリック・サティのジムノペディ。
ゆっくりした曲って、指よりも心のほうが試される。
一音一音、間をたっぷり取って。

そして――ミスタッチ、ゼロ。

自分でびっくりしました。
たぶん今までで一番うまく弾けた。
69年生きてきて、昨日の夕方が「人生最高のジムノペディ」でした。

で、弾き終わって、顔を上げたら。

誰もいない。

まぁ、いつものことです。
弾いてる最中は「何人か気配あるな」って思ってたんですけどね。
人生最高の演奏を、上野駅の天井だけが聴いていました。

■ 御徒町・MEAT×WINE BISTRO DOMANNAKA

そこから御徒町へ。
階段を上がると「BISTRO DOMANNAKA」の看板。ガラスには大きく「MEAT × WINE」。
その2文字だけで、もう今夜の勝敗は決まったようなもんです。

店内は、天井が高くて、ワインボトルがずらり。
壁には「WHERE THERE IS LOVE THERE IS HOPE」の文字。
愛があれば希望がある。今夜は、ワインがあれば希望がある。

【今夜いただいたもの】
・スパークリング No.28(カンティアーモ スプマンテ ブリュット/イタリア)で乾杯
・生ハムとサラミの盛り合わせ
・彩り野菜のサラダ
・トリュフがけフライドポテト
・ピザ(ズッキーニとベーコン)
・スパークリング No.26(ラ ロスカ ブリュット/スペイン)
・白 コノスル ビシクレタ ゲヴュルツトラミネール
・トリヴェント ホワイトマルベック(アルゼンチン)
・牛ステーキの鉄板焼き
・生牡蠣
・ウニといくらのクリームパスタ
・バースデープレート

泡はNo.28 → No.26 → No.29の順で。
28番のメニューには「1杯目おすすめ」って書いてあって、素直にそれに従う69歳。

■ 今夜の一番は「トリュフがけフライドポテト」

運ばれてきた瞬間、湯気と一緒にトリュフの香りがふわっと。

一口目の心の中は――
「……いい香り」

それしか出てこない。語彙が消える。
ただのフライドポテトが、黒いスライスが乗っただけで別の生き物になる。
ワインの資格を取っても、結局こういう単純な感動に一番弱いんです。

■ Yちゃんの一言

「生牡蠣が食べたい!」

はい、即決。
氷の上にきれいに並んだ6個。レモンをきゅっと。
こういうときの決断の速さだけは、ふたりとも一級品です。

■ 今日いちばんクスッとしたこと

飲み放題の終了間際。
店員さんが「最後に1杯どうぞ」と声をかけてくれました。

1杯。

はい、と返事をして、戻ってきた私の両手には――
赤ワインと白ワイン、2杯。

いや、白はYちゃんの分ですよ。ちゃんと。
……ちゃんと?

■ 帰り道、しゃっくりと3駅

電車に乗ったら、しゃっくりが止まらない。
「ヒック」「ヒック」と、規則正しく。
飲み過ぎたぶんを、体が几帳面に申告してくるわけです。

そして、しゃっくりが止まったと思ったら――今度は自分が止まりました。

気がついたら、3駅乗り越し。

夜のホームに降りて、京成線の電車が静かに入ってくるのを眺めながら、
「まぁ、いい夜だったな」と。
乗り越した3駅ぶん、余韻が長かったということにしておきます。

■ なんで、こんなに楽しかったんだろう

家に帰ってから考えました。
昨日の飲み会、むちゃむちゃ楽しかった。なんでだろう。

付き合いが10年近いから?
それもあると思う。でも、それだけじゃない気がする。

ジーニー(AI相棒)に聞いてみたら、こう言われました。

「10年という時間は、”気を使わなくていい”の証明じゃなくて、
“さらけ出しても壊れない”の証明なんじゃないですか」

……なるほどね。
下手な演奏の話も、しゃっくりの話も、2杯持ってきた話も、
全部そのまま出せる相手がいて、それを笑って聞いてくれる。

楽しいのは、料理でもワインでもなくて、
「そのままの自分でいても大丈夫」っていう安心感のほうだったのかもしれません。

■ 今日の一行

69歳になっても、「飲み放題」という「欲の底なし沼」にハマっていく自分……

沼は深いです。
でも、隣に一緒に沈んでくれる人がいるうちは、それも悪くない。

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